調香師が紹介する奥深い世界各地の香りの歴史~グラース編~

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香りで有名な都市といえばどこを思い浮かべますか?

香料業界では、フランスのグラースが「香りの都」と呼ばれています。

この記事では、香水のプロ・調香師ユタカが、香水文化が花開いたグラースにおける香りの歴史を解説します。

調香師ユタカ<br>
調香師ユタカ

1,000以上の商品開発に携わった元化粧品メーカーの調香師ユタカと一緒に香りの歴史を学びましょう!

奥深い香り文化の歴史については、下記の記事もご覧ください!

香りの歴史~香りの都、グラースとは?~

香り 歴史 グラース

 香りの都、香りのメッカと呼ばれている都市、グラース(Grasse)。

フランスの南部(いわゆる南仏)に位置し、映画の都として知られるカンヌ(Cannes)から車で30分、観光地として有名なニース(Nice)から1時間ほどの場所です。

地中海に面した風光明媚な場所として有名です。

面積は44.44km2 で、東京だと練馬区や江東区と同じくらいの広さです。

人口は49,100人でかなりのどかな風景が広がる、ゆったりした街です。

現在ではフランスの香水・香料の2/3がグラースで作られ、年間600億ユーロの売上があると言われています。(wikipediaより)

香りの歴史~グラースの成り立ちは「革なめし」~

香り 歴史 皮 革

18世紀まで、グラースは牛革製品の産地として栄えていました。

グラース産の牛革手袋は品質が高く、貴族など上流階級の婦人に大変人気でした。

しかしご婦人たちの悩みは革のにおい。

野球のグローブのにおいと言ったら想像がつくかと思いますが、あまりいいにおいではありません。

いくら品質の高い手袋でも、臭くてはなかなか使いたくないですよね。

そこでグラースの革なめし職人が手袋に香水を吹きかけて販売することを考案し、これが大ヒットしました。

香料業界の用語ではマスキングと呼ばれる技術で、良い香りで嫌な臭いを感じにくくさせてしまうというものです。

グラースは地中海性気候のため花やハーブの生産に最適で、ローズ・ジャスミン・ラベンダーなどを育てていたので、これらの香りがマスキングに用いられました。

ちなみに、その当時の天然香料はアンフルラージュ(冷浸法)という手法で製造されていました。

アンフルラージュ(冷浸法)は、牛や豚などの動物の固形の脂(ラードみたいなものです)に花を浸して、脂に香りを移らせるという原始的な手法です。

革なめしを生業としたグラースではラードはゴミとして廃棄されていたので、香料製造に必要な脂が安価に入手できたのも、香料産業が浸透した一因でしょうね。

香りの歴史~「香りの都」へのシフト~

香り 歴史 天然香料

「革なめしと香料の街」として栄えたグラースでしたが、革製品の税率が上昇したり、お隣のニースとの競争に負けたり、というきっかけがあり、香料製造一本を生業にする現在のスタイルにシフトしていきました。

ちなみに革なめし業者は税金の安いスペインに流れていき、今でもスペインは革製品で有名なのは、これが理由です。

さて、グラースではローズ、ジャスミン、ラベンダーだけでなく、オレンジフラワーやミモザなど様々な花を栽培し、そこから香料を抽出して販売する農家が増えていきました。

特にバラやジャスミンなどは日の出とともに開花し、良い香りを放ちます。

午後には香りが弱くなってしまうため、収穫時期になると一家総出で朝から収穫をするそうです。

また、収穫した花をすぐ蒸留するのではなく、倉庫で寝かせて熟成させたのちに精油を抽出するのが一般的です。

これらの収穫時期や倉庫の温度・湿度の管理などが各農家で門外不出のノウハウとなっていて、素晴らしい品質の天然香料が製造されているのです。

香りの歴史~合成香料の発明~

香り 歴史 合成香料

ルネッサンス(=16世紀)以降、グラースで香料素材の抽出法を向上させ、「少量で長時間持続する香料」を製造できるようになりました。

アンフルラージュではなく、水蒸気蒸留法を採用する企業が参入し、香料は「農家単位で作る」ものから「農家から原料を買い付けて、企業の大規模工場で製造する」ものへと発展を遂げていきました。

それに伴い、時代は「悪臭を隠すために強い香りを大量に使う」時代から「オシャレのために優しい香りを使う」という流れに変わっていきました。

とはいえ、フランスは伝統を重んじる風習がありますので、現在でも小規模農家はいくつも存在していますし、良質な精油は相変わらず健在です。

大企業による品質の安定した香料の大規模製造と、少量ながら質の高い天然精油を製造する小規模農家がうまく共存する、という理想的な形がグラースにはあります。

香りの歴史~著名な調香師を育む街~

現在のグラースは、有名な調香師を何人も輩出しています。

  • ミシェル・アルメラック(Michel Almairac)
  • ジャック・キャバリエ(Jacques Cavallier)…ルイヴィトンの専属調香師
  • ジャン=クロード・エレナ(Jean-Claude Ellena)…エルメスの初代専属調香師
  • ジャック・ポルジュ(Jacques Polge)…シャネルの専属調香師

有名調香師たちの経歴や代表作については、下記の記事をご覧ください!

香りの歴史~グラース編~まとめ

香りといえばグラース、グラースといえば香りです。

現在でも世界中の調香師がフランスに留学して香り創りのイロハを学ぶのが常識となっています。

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この記事を書いた人
調香師 男性 普通
調香師ユタカ

化粧品メーカーの研究所で8年間、調香師として商品の香り開発をしていました。スキンケア、メーキャップ、ヘアケア、入浴剤など含め、1,000以上の化粧品の香りをデザインしました。香水を初心者にも気軽に楽しんでもらうために、このサイト(調香師ユタカのおすすめ人気香水ナビ)を立ち上げました。詳しいプロフィールはこちらから。

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